9月号では欧米FCテクノロジーのうち、アンダーフィル自動注入につきまして論文紹介しました。
10月号ではFC接合部の信頼性につきまして示唆に富む論文を紹介します。
詳細は、当社発刊の「'97欧米FC最新テクノロジーの詳細と動向」(約100頁)を御覧ください。当社は米国リードイグジビション社より著作権を得ています。
半導体チップ接合部品の応力解析 9710
(まえがき)
半導体チップを、ヒートスプレッダーの1種とも考えられる銅リードフレーム(銅板状)上に各種の方法で接合し、応力を解析している。熱膨張率、温度差、長さ等もちろん重要であるが、特に接合体のヤング率は重要で、低ヤング率の接合体(例えば銀エポキシ)の場合(イメージとしてはコンニャク)、接合体が応力に応じて変形することで、大きな応力は発生しない。しかし、熱や電気伝導率は低い。
1. 序
半導体チップは銅リードフレームやセラミックに接合されるので、熱膨張率の不一致により構造体には応力が生じる。その応力は一般に部品温度が低いほど、チップ寸法が大きいほど増大する。しかし構造体によっては、応力がチップ寸法に依存せず、むしろ歪量に依存する場合がある。従って応力評価は半導体チップの大小に関わらず重要である。応力の計算と理解は信頼性評価のため必要である。応力が過大になると、チップの亀裂や接合破壊が起こる。対象とした構造体は、銅リードフレーム(銅板状)に接合された5×5mmのシリコンチップと2×2mmのGaAsチップである。接合剤として硬はんだ、柔はんだおよび銀充てんエポキシを選んだ。
2. チップ接合材料とその性質
デバイス中のチップ接合層の機能は、機械的接着、熱伝達および電気伝導である。この研究では、接合温度と室温との温度差により生じている応力に焦点を置いて検討する。応力発生の要因は、接合温度(合金の場合はその固相線温度)との温度差、熱膨張率(CTE)およびヤング率である。表1に代表的な半導体およびパッケージ材料の主要特性(25℃)を示した。
表1
はんだ−鉛/錫共晶合金
柔はんだは一般に安価で、良好な電気伝導性と妥当な熱伝導性を持っているが、力学的には弱い。チップやリードフレームより弱いはんだ接合が、塑性変形を起こすので、高い応力が発生しない。反面、熱疲労やクリープ破壊によるはんだ部の不良が発生し得る。従って熱サイクル環境での接合信頼性確保のため、応力と歪の注意深い評価が重要である。Sn/Pnはんだは粘弾性を持ち、応力−歪曲線は非線形で温度に依存する。非線形材料の性質はRamberg−Osgood式で記述される。εとσは一軸の歪と応力。
ε=σ/E + ( 3σ0.7/7E)(σ/σ0.7)n乗
Eとnはヤング率と硬化指数である。σ0.7は正割弾性率が0.7Eの時の一軸応力である。実測データに合致するようにパラメータを定め(表2)、これらと(1)式で得られる曲線を図1bに示した。
表2
図1b
硬はんだ−Au/Sn共晶合金
金共晶合金の力学強度は大きいので(表1降伏強度参照)熱負荷の下でも、弾性体として挙動する。従って硬はんだで接合されたチップは発生した全応力に耐えなければならない。シリコンあるいはGaAsチップ、硬はんだ、銅リードフレーム間の熱膨張率の不一致が大きいことに加えて硬はんだの融点が高いため、接合工程から発生する応力と反復応力の負荷がチップに亀裂を発生させることがある。
Au−20Sn合金の融点は280℃でAu−GeやAu−Siに比較すると最も低く、応力発生も最小である。温度の影響も含めた物性についての報文は少ないが、本報では最新のデータを採用した。図2にヤング率の温度変化を示した。熱膨張率とポアソン比の温度変化は無視できる。解析にはヤング率の実測値を使った。図2
銀充てんエポキシ
エポキシ接着剤は広く使われているが、接合層が非弾性的に変形するので高い応力は発生しない。しかし熱伝導性と電気伝導性が乏しいという欠点があり、改善のため銀粉を60〜80%充てんしているが、熱及び電気的特性はSn/Pbはんだより劣っている。しかし低温(150〜200℃)の単一工程で硬化でき、応力緩和能力を持つという利点がある。本報で検討した特定の銀充てんエポキシは150℃ 15分で硬化する。銀エポキシの特性も温度に依存する。ガラス転移温度Tgがエポキシの軟化点であり、Tg以上の温度では力学特性が鋭く低下し、熱膨張率は約3倍に増大する。本報で用いた銀エポキシのTgは60℃であり、表1には室温での特性を示した。Tg以上でのヤング率と熱膨張率は30Mpaと2.00ppmである。現在供給されている銀充てんエポキシの力学的特性は不完全で不足していると指摘したい。
3. FE(有限要素法による)応力解析結果
(本文すべて省略)
銅リードフレーム上の大きいSiチップ表3'
銅リードフレームに接合されたGaAsチップ(図省略)
まとめ
応力で曲がりやすい銅リードフレームを用い、反りがどのように応力を和らげられるか検討した。三種の接合剤はそれぞれ独自の応用と特性を持っている。それらの力学特性に温度依存性があることは共通である。Sn−Pb共晶はんだの非線形応力―歪曲線はRamberg−Osgood式で記述される。Au−20Sn共晶はんだのヤング率の温度依存性を検討した。Au−Snはんだについては、降伏強度が大きいので線形の応力―歪関係を採用した。銀充てんエポキシの場合はガラス転位温度が力学的性質を二つの領域に分割する。驚いたことに供給されているエポキシの力学的性質は非常に不完全である。
Pb−Snはんだは降伏強度が低いため塑性変形を受け、応力が緩和される。他方この塑性変形は熱サイクル環境では熱的疲労の原因となり得る。銀充てんエポキシは応力発生は小さいが、電気および熱伝導性が低い。従って接着剤の選択は用途と要求性能によることが明らかである。
(あとがき)
応力の問題は、我々実装に関わるものがいつも苦心している古くて新しい問題である。応力を発生させない工夫(熱膨張率を接近させる。部品を小さくする。放熱を促進し、使用温度差を小さくする)や、応力を分散吸収する方法(接合体材料の工夫、板バネであるリードの使用、アンダーフィル剤の使用、スタンドオフ高さの確保)、基材の熱膨張率を抑える(低熱膨張率基材の使用、低ガラス転移温度基材の使用)などなど、いろいろなコンセプトがある。
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